映画『凶悪』のシーン解説:冷水で死亡推定時刻がずれる理由とは?

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映画『凶悪』で、殺害後の遺体を冷水に浸けて死亡推定時刻をずらすシーンが登場します。このような方法でなぜ推定時刻がずれるのか、その理由を科学的に解説します。遺体の冷却が死亡時刻の推定にどう影響するのかを理解するために、遺体温度の変化と死後硬直の進行に注目して見ていきます。

1. 死亡推定時刻の計算と体温変化

通常、遺体の死亡推定時刻は死後の体温低下を基準に算出されます。人の体温は死後、時間が経過するごとに少しずつ低下し、外部の気温と一致するまで変化します。この体温低下の速度に基づいて、死亡から経過した時間をおおまかに推測できるのです。

一般的に、死亡直後の体温は37℃近くですが、時間経過とともに体温が1時間あたり約1~1.5℃低下します。この現象を利用して、推定時刻を計算しますが、冷水などで意図的に体温低下が早められると正確な時刻算出が困難になります。

2. 遺体を冷水につけると体温低下が加速する理由

遺体を冷水に浸けると、通常よりも早く体温が外気温と同じ温度に近づきます。水は空気よりも熱伝導率が高く、遺体の表面温度が急速に冷却されるため、結果として体温低下が促進されます。こうして急速に冷えることで、実際の死亡時刻が不明瞭になり、推定が難しくなります。

また、冷水による冷却が続くと、死後硬直や腐敗の進行も遅くなり、死亡後の時間経過を判断する要因にも影響が出るため、推定時刻がさらに不確かになるのです。

3. 冷却による死後硬直への影響

死後硬直は死亡から約2~3時間で始まり、12時間ほどで全身に及ぶとされています。しかし、冷水で冷却すると筋肉組織の硬直速度が遅くなるため、硬直の進行具合で死亡時間を推定するのも難しくなります。これにより、専門家の目から見ても死亡推定時刻を絞り込むことが困難になります。

4. 実際の捜査で用いられる冷却対策の例

現実の捜査でも、犯罪者が死亡推定時刻の特定を防ぐために遺体の冷却を意図的に行うケースがあります。例えば、遺体を冷蔵庫や冷水で冷やすといった方法です。こうすることで体温低下や硬直、腐敗が遅れ、捜査官が正確な死亡推定時刻を特定するのを難しくする意図があります。

まとめ:冷却と死亡推定時刻の関係

映画『凶悪』でのシーンは、死亡推定時刻をずらすために冷水を使う効果的な方法を反映しています。体温の急速な低下、死後硬直の遅延、そして腐敗の進行抑制は、推定時刻の誤差を生む要因として作用します。このような方法が用いられる背景には、死亡推定時刻を曖昧にすることで犯行の隠蔽を図る意図があるのです。

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